英語原文からの翻訳です。訂正歓迎します。
お通し――頼んでいない小鉢は、何の代金なのか
ドリンクを頼んだばかり――壁の品書きで唯一読めた「ハイボール」――というところで、小さな陶器の器がカウンターに置かれる。中にはきんぴらごぼうが数本。醤油と胡麻で艶をまとったごぼうと人参だ。頼んだ覚えはない。渋谷・のんべい横丁の細長い店、路地の背後の高架を電車が通り過ぎていくなかで、誰も説明してはくれない。あとで伝票を見ると、読めそうで読めない手書きの文字で「お通し」と一行記されている。
注文より先に届くひと皿
その器がお通しだ。そして多くの居酒屋では、選択の余地はない。最初の一杯とともに一人にひとつずつ出され、一人あたりの料金が「お通し代」として伝票に載る。旅行者にとってこの瞬間は手違いに、悪くすれば仕掛けにさえ見えるかもしれない。店にとっては、ただ夜がそうやって始まるというだけのことだ。
言葉の由来としてよく語られるのは、詩的というより実務的な説明だ。「通す」とは、何かを先へと通すこと。このひと皿は、あなたの注文が厨房に通ったことを知らせる合図なのだ。同時に、料理人に数分の猶予を与えてくれる。焼き鳥は炭火にかける時間が要り、刺身は切り分けなければならない。けれどお通しはその日の午後に仕込んであって、器に盛るだけでいい。だから焼き台が追いつくまで空きっ腹で飲むのではなく、ビールの最初のひと口と一緒に何かをつまめる。
東京では「お通し」、大阪では「突き出し」
西へ行くと、呼び名が変わる。大阪をはじめ関西の多くの地域では、同じ小皿を「突き出し」と呼ぶことが多い。「突き出す」、つまり押し出すことに由来し、まだ何も選んでいないうちにカウンター越しに差し出される皿を指す。大阪メトロ御堂筋線のなんば駅から数分、裏なんばの路地を歩けば、手書きの品書きにどちらの言葉も見つかる。ときには同じ路地のなかで。
ほかの土地では、この習慣はまた別のかたちをとる。福岡・博多の焼き鳥店の多くでは、最初にテーブルに置かれるのは、きりっとした酢ダレをかけた生のキャベツ、酢ダレキャベツだ。常連は串の合間にこれをつまむ。料金がかかるかどうか、どうかかるかは店しだい。京都の先斗町――鴨川と木屋町通に挟まれた細い路地で、京阪線の祇園四条駅にほど近い――のカウンターの店なら、出汁で炊いた旬の野菜を数切れに魚をひと口、といった小さな献立に近いものが出てきて、値段もそれ相応になることがある。どこへ行っても型は同じだ。頼まずとも出てくる小さなひと品があって、本格的な注文はそのあとに始まる。
その料金が本当に意味するもの
お通しを「買わされる料理」と考えるのは、やめたほうがいい。実態はほぼ、料理の付いた席料だ。多くの国のバーは、席の代金を酒の値段に忍ばせている。多くの居酒屋はそれを別建てにしていて、お通しはその目に見える部分にあたる。メニューにはっきり書いている店もある。ドリンクのページの下のほうに印刷された、こんな一行だ。
当店ではお一人様にお通しをご用意しております。
ローマ字にすると tōten de wa ohitori-sama ni otōshi o go-yōi shite orimasu。おおよそ「お客様お一人ずつにお通しをご用意しています」という意味で、料金があることを丁寧に伝える言い回しだ。店によっては「チャージ」や「席料」と呼ぶ。とくに多いのが新宿ゴールデン街の小さなバーで、英語表記の有無はともかく、扉の脇の看板に料金が示されているから、階段を上る前に確かめられる。
金額は店によっても、街によっても違う。気軽な居酒屋なら、同じメニューにある小鉢一品とだいたい同じくらい。高級な界隈のカウンターでは、それをかなり上回ることもある。信頼できる数字は、その店のメニューか扉の看板に書かれたものだけだ。街全体について耳にした話に頼らず、その場で確かめよう。
器を読む
お通しは、厨房が自らについて最初に語るひと言でもある。だから、注意を向ける価値がある。駅の出口そばのチェーン居酒屋なら、千切りキャベツや枝豆が少し出てくるかもしれない。JR新宿駅の西口脇、思い出横丁のような路地にある家族経営の小さな店なら、その日に料理人がこしらえたものが出てくる可能性が高い。油揚げと人参と一緒に炊いたひじき、胡瓜入りでマヨネーズたっぷりのポテトサラダをひと匙、おろし生姜をのせた冷奴をひと切れ、といった具合に。
次の一杯を誘うために、塩気の強いものを出す店もある。定番はイカの塩辛で、初めての人はたいてい、大好きになるか大嫌いになるかのどちらかだ。季節もまた、本メニューに届くより先にここに現れる。初夏にはそら豆、秋には炊いた大根、マグロにのせた小さなとろろの山。お通しが丁寧に作られていれば、品書きの煮物もおそらく同じだろう。袋から出しただけのような味なら、焼き場から出てくるものを頼もう。
断れるとき、その断り方
頼めばお通しを外してくれる店もあるが、多くは応じないし、黙って別のものを出してくれる店もわずかにある。この質問は、レジよりも入口でするほうがずっと気楽だ。席に着く前に「お通しはありますか」(otōshi wa arimasu ka)と尋ねるのは、まったく正当なこと。その答えで、店がそれを決まりごととして扱っているかどうかが、たいていわかる。
アレルギーや貝・甲殻類、ベジタリアンの食事などで出されたものが食べられないなら、手をつけずに置いておくのではなく、すぐにそう伝えよう。厨房が差し替えてくれることもあるし、夜の終わりに手つかずの器が残っていると、不満の表明として受け取られてしまう。立ち飲み店や一部のチェーンでは、この習慣を省いていることが多い。コースや飲み放題プランに組み込む店もあり、その場合は最初のひと皿として出てきて、伝票に独立した一行は載らない。あとから料金をめぐって言い争っても、うまくいくことはまずない。小さなカウンターの店の人が何も説明しなかったのは、たいてい、彼らにとってこの習慣が説明の要らないものだからだ。レジでの長いやりとりは、あの小鉢よりも、その場の誰にとっても高くつく。
出かける前に
お通しは夜の習慣だ。多くの居酒屋が出している昼の定食に付くことはまずなく、確実に出会えるのは飲み屋街の開店時間以降。新宿、渋谷、裏なんば、そして福岡市地下鉄の中洲川端駅周辺に広がる中洲などだ。特定の店の料金を確かめたいなら、ドリンクメニューのいちばん下や入口の看板を見るか、出かける前に店のウェブサイトや掲載情報をのぞいておくといい。飛び込み客をあまり受けない小さな店なら、ホテルのフロントが前もって電話してくれることもある。小さなカウンターの店は現金を好むことが多いので、お通しについて尋ねるついでに、支払い方法も聞いておこう。
避けたい失敗は、自分の国と同じ感覚でバーを渡り歩くことだ。一軒、また一軒と飲み歩く「はしご酒」は日本に実在する習慣だが、お通しを取る店では、新しく入るたびにまた請求される。四人の仲間が五つの路地を一杯ずつ渡り歩けば、ほとんど手をつけない小鉢二十個分を払うことになる。店は二軒に絞り、品書きから注文できるくらいの時間は腰を落ち着けて、最初のひと皿にその役目を果たさせよう。それは厨房に時間を与え、あなたには長居する理由を与えてくれる。
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