英語原文からの翻訳です。訂正歓迎します。
静岡おでん――黒いだし、だし粉、串で数える勘定
平日の夜、静岡市のおでん屋。カウンターの奥の鍋は濃く淹れたお茶のような色で、中身はほとんどすべて串に刺さっている。二つ隣に座る男性が大根の串を一本引き上げ、へこんだ缶から緑がかった茶色の粉をふりかける。三口で平らげると、空になった串を肘のそばのカップに落とした。彼が席を立つと、カウンターの女性がカップを傾けて串を数える。その本数が彼の勘定になる。この街のおでんについて、旅人が最初に知っておくべきなのはそのことだ。
見慣れたものより、ずっと黒いつゆ
東京のコンビニや大阪の立ち飲み屋でおでんを食べたことがあれば、淡い色の料理として覚えているだろう。澄んだ黄金色のだしに、練り物や大根が浸かっている。静岡おでんは、それとはまるで別の料理に見える。つゆのもとは牛すじと濃口醤油で、ほとんど黒くなるまで煮込まれる。つゆを毎日捨てずに継ぎ足していると話す店もいくつかあり、鍋にはそれまでの日々の味がどこかに残っている。
もうひとつ違うのが串だ。大根、こんにゃく、牛すじそのもの、そして多くの店ではゆで卵までが、鍋に入る前に細い竹串に刺される。だから鍋の中は串がぎっしりと立ち並び、持ち手でできた小さな森のように見える。カウンターの向こうの人は、鍋の中を探ることなく、狙った一本だけをすっと引き上げられる。
黒はんぺん、駿河湾から来た灰色の練り物
ここが静岡だと教えてくれる一品が、黒はんぺんだ。東京のはんぺんは白く四角く、ふんわりとしていて、スケトウダラと泡立てた卵白で作られる。静岡のものは平たい灰色の半月形で、イワシやサバを骨ごとすり身にして作り、素直に海の味がする。駿河湾沿いの漁師町の産で、駅の土産物店に並ぶパッケージには、焼津の名がいちばんよく見られる。
鍋の中で黒いつゆをたっぷり吸っても崩れない。だから牛すじの隣に、ずっと居場所がある。おでん鍋の外でも、地元の人は焼いたり、ウスターソースをかけた黒はんぺんフライにしたりして食べる。市内のスーパーの冷蔵ケースには飾り気のないプラスチックパックで並んでいて、保冷バッグに入れて持ち帰る土産としても悪くない。
だし粉と、カウンターの缶
あの缶の中身はだし粉。鰹節やイワシなどの干した魚の粉に、青のりを混ぜたものだ。おでんを鍋から上げたあとにかけるもので、常連はかなりたっぷり使う。缶の隣にはたいてい、黄色くつんと辛いからしの壺が置いてある。何かに溶き混ぜるのではなく、具の端にちょんとつけて食べる。
旅行者が聞き違えやすいのがここだ。日本のほかの地域で「だし」といえばつゆのことなので、「だし」を頼むと、つゆを足してほしいという意味に聞こえかねない。ここでは、店の人がたいてい黙って缶をこちらへ滑らせてくれる。言葉はほんの少しで足りる。
だし粉はたっぷりかけるのが静岡流です。
静岡ではだし粉を惜しまずかけるもの、という一言だ。もっとも、誰かがそう口にする前に、目の前で同じことが始まっているだろう。
青葉シンボルロード近くの二つの路地
おでんの店がもっとも集まっているのは、静岡駅の北口から数ブロック先の青葉シンボルロード周辺だ。木々とベンチが続く、細長い歩行者空間である。そのすぐ脇に、青葉おでん街と青葉横丁がある。屋根のかかった細い路地に小さな店が軒を連ね、どの店にも暖簾と赤ちょうちん、そしてほんの数人しか座れないカウンターがある。丸椅子がタクシーの座席くらいの数しかない店もある。
一人で入るのも気軽でいい。戸口で指を一本立てて「一人です」と言えば、空きがあれば手招きで席に通してくれる。たいていの店がおでんと一緒に出すのは静岡割り。焼酎を地元の緑茶で割ったもので、茶畑の広がる県らしい一杯だ。常連がいて、店主は彼らを名前で覚えている。見知らぬ客が腰を下ろすと会話が一瞬途切れ、やがてまた続いていく。そういうものだと心得ておくといい。
串を数えること、そして放課後の鍋
串の本数で払う方式は市内のあちこちで見られるが、細かな仕組みは店ごとに違う。串の長さや先端の色で印をつけ、数えるときに大根と、それより値の張る牛すじとを見分けられるようにしている店もある。出すたびに頭の中で数を足していく店もある。いずれにしても、空いた串は自分が食べたものの記録なので、目の前のカップや串入れに入れたままにしておく。友人と同じカップを使うなら、その前に、まとめて会計してもらえるか店に確かめておこう。
これは夜だけの話ではない。静岡の駄菓子屋では昔から、子どもたちが放課後に一本だけ買えるよう、入り口のそばにおでん鍋を置いてきた。住宅街には今もそうしている店がいくつか残っている。静岡浅間神社へと続く商店街、浅間通りには、昼間からおでんを一本ずつ売る店があり、店先にベンチを出していることもある。夜のカウンターに腰を据える前に、一、二本試してみるなら、ここがいちばん手軽だ。
アクセス、訪れる時期、そしてひとつの失敗
静岡駅は東海道新幹線の駅だが、最速の「のぞみ」は停まらずに通過する。「ひかり」か「こだま」に乗るか、熱海と浜松のあいだを移動中なら、JR東海道本線の普通列車でもいい。どの「ひかり」が停まるかは、運行会社の時刻表で確かめておきたい。青葉の路地も浅間通りも、駅から歩いて行ける。おでんは日本の多くの地域では冬の食べ物だが、静岡では一年中出す店が多い。それでも鍋がいちばん似合うのは、晩秋の肌寒い夜だ。
路地の店はどこも小さく、店主が一人で切り盛りしていて、営業時間も店それぞれ。週一回の定休日も店によって違う。お目当ての店があって夜の予定を組むなら、その店か静岡市の観光案内所に事前に確認しておこう。値段は一品ごとで、壁の品書きに価格帯別に書かれている。この広さの店ではカードが使えないこともあるので現金を持っていき、心配なら入るときに聞くといい。避けたい失敗はひとつだけ。よその土地で身につけた行儀のいい習慣だ。空いた串をきれいにまとめてゴミ箱に捨てたり、皿と一緒に返したりしてはいけない。そのままにしておこう。ここでは、串こそが勘定なのだから。
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