英語原文からの翻訳です。訂正歓迎します。
文来洞の鉄工所路地 ミュージックビデオの撮影隊が「働く背景」を借りる街
土曜の午後、文来洞(ムルレドン、문래동)。配送トラックがやっと通れるほどの路地で、グラインダーが短い扇形の火花を散らす。10メートル先では、スタイリストがジャケットにスチームを当てている。ハンガーラックは、巻き上げた鉄のシャッターに立てかけてある。そのそばでカメラアシスタントが、歌手の立ち位置を示すテープをコンクリートに貼っていく。互いに目を向けることはない。鉄工所には仕上げなければならない注文があり、撮影隊に残された光は数時間しかない。ソウル西部のこの一角は、その両方を同時に受け止めるすべを身につけてきた。
糸車にちなんだ街
文来は漢江の南、永登浦(ヨンドゥンポ、영등포)にある。1街から6街まで番号が振られた低い街区が、碁盤の目のように並ぶ。地元では、この地名は糸車を意味する「ムルレ(물레)」に由来すると語られてきた。鉄道沿いのこの平らな土地を、かつて大きな紡績工場が覆っていたからだ。その話が本当かどうかはさておき、紡績工場が工場を呼び、工場がほかのすべてを呼び込んだ。いま訪れる人がカメラを向けるものの多くは、その後にやってきた。清渓川(チョンゲチョン、청계천)や乙支路(ウルチロ、을지로)といったソウル中心部を追われた金属加工所が、この街の2階建て、3階建ての建物に移ってきたのだ。
いまも残るのは、鉄工所(チョルゴンソ、철공소)と呼ばれる小さな工房の集まりだ。注文に応じて金属を切り、曲げ、溶接し、削り出す、現役の工房群である。ほとんどはガレージほどの奥行きしかない。外壁には鋼板が立てかけられ、通りでは鉄の棒が木のパレットに積まれている。入口の上の手書き看板には、屋号の代わりに業種と携帯電話の番号。注文主は建設業者やメーカーなので、路地がいちばん慌ただしいのは、街のほかの人々がデスクに向かっている時間帯だ。
カメラが何度も戻ってくる理由
ソウルにはガラス張りの高層ビルも、修復された韓屋もいくらでもある。画面に永登浦の高層ビル群や北村(プクチョン、북촌)の瓦屋根が映れば、ひと目で「ソウル」とわかる。文来が差し出すのは、もっと希少なもの、どこの街にも見える背景だ。波板の屋根、窓枠から垂れる錆の筋、頭上に絡まる電線、ローラーシャッターの凹凸。アートディレクターはここで、ランドマークに頼らずに質感を手に入れられる。ミュージックビデオやドラマの深夜の追跡シーンがこの路地を借りても、観る人の誰も地図の上で場所を言い当てられない。シャッターの多くには、壁画やステンシル、ときにはマンガのような溶接工の絵が描かれている。家賃が安かった頃に上の階へ移り住んだアーティストたちが残したものだ。
光が多くを語る。夕方近く、低い日差しが鋼板をとらえてオレンジ色に染める。日が暮れると、街はつぎはぎの明かりに照らされる。まだ動いている工房の蛍光灯、琥珀色の街灯、そして古い工房を改装したバーの温かな電球。撮影そのものは見えなくても、その気配に出くわすことがある。スライドドアを開け放した白いバン、スナックを並べた折りたたみテーブル、パレットに立てかけたレフ板。ほかの職場と同じように接してほしい。撮影隊はスケジュールに追われて働いている。路地は待合室ではないのだ。
いまも働く路地の読み方
文来をいちばんよく味わうには、どれひとつとして自分のために用意された光景ではない、と受け入れることだ。平日には、看板に旋盤(ソンバン、선반)と記された機械が、半分上げたシャッターの奥でうなりを上げる。フォークリフトがパイプの束を抱えて戸口からバックで出てくる。漂うのはコーヒーの香りではなく、切削油と熱い金属の匂いだ。職人たちは工房の間に挟まった小さな白飯(ペクパン、백반)の店で昼をとる。ご飯に汁物、おかずがつく定食を、昼休みのうちに食べて席を立つ。ここを歩くなら、こまめに道を譲り、研削や溶接をしている人からは十分に距離をとること。火花や切れ端は、見た目よりずっと遠くまで飛ぶ。
日曜になると、その多くが静まり返る。シャッターが下り、描かれた絵が姿を見せるのはこのときだ。路地は長時間露光ができるほど人けがなくなる。ただしその代わりに、この街を特別にしているものは消えてしまう。シャッターを閉ざした文来は、壁画のきれいなよくある裏通りにしか見えないこともある。仕事の様子そのものを撮りたいなら、まず声をかけ、手短に済ませること。首を横に振られたら、それで答えは十分だ。
사진 한 장 찍어도 될까요?
サジン・ハン・ジャン・ッチゴド・テルッカヨ(Sajin han jang jjigeodo doelkkayo)、「写真を一枚撮ってもいいですか」。スマートフォンを構えたままではなく、下ろしてから尋ねよう。そうすれば形だけの挨拶ではなく、本当の問いかけとして伝わる。顔も上げずに手で「どうぞ」と合図してくれる職人もいる。看板だけ撮って先へ進んでほしい、という人もいる。どちらの答えにも、同じだけの敬意を払いたい。
上の階の、もうひとつの文来
工房の上や合間には、別の時間で動くもうひとつの街がある。アーティストたちが上の階にアトリエを借りはじめ、ソウル市の文化財団は文来芸術工場(문래예술공장、ムルレ・イェスル・コンジャン)を運営している。レジデンスやリハーサル、ときおりの公演の場として建てられた芸術施設だ。ここを軸に一日を組むなら、事前にプログラムを確かめておきたい。小さなギャラリーは開く日が不定期で、展示の会期中しか開いていないことも多い。
いちばん速く変わったのは1階だ。かつての工房には、いまではコーヒーロースターやワインバー、小さなブルワリー、パスタの店が入っている。その多くが、もとの鉄骨の梁や引き戸、頭上のチェーンホイストをそのまま残している。屋上テラスや、波板屋根を見下ろす2階の窓を持つ店もいくつかある。撮影隊がもっともよく借りるのがこの眺めだ。灰色と赤錆色のパネルが低く広がり、その向こうに永登浦の高層ビルがそびえる。溶接からブランチへの移り変わりは、すんなり進んだわけではない。家賃は人通りを追って上がる。にぎわうカフェの間で暗く閉ざされたシャッターは、週末だから閉まっているとは限らないのだ。
アクセスと、避けたい失敗
緑色のラインで示される2号線が文来駅(문래역)に停まり、鉄工所の路地へは歩いてすぐだ。2号線と5号線が交わる永登浦区庁駅(영등포구청역)からも入りやすい。一帯は徒歩で1〜2時間ほどで回れる。ただし路地は入り組んでいて、どこも似たように見える。出かける前に、NAVER MapかKakaoMapでカフェや芸術工場にピンを立てておこう。エリアの一方の端には、遊歩道のある小川、道林川(トリムチョン、도림천)が流れている。帰りは別の道を選ぶのもいい。
時間帯なら、平日の午後の半ばから夜にかけてがいい。稼働中の工房と低い光があり、シャッターが下りるのと入れ替わりにバーが開きはじめる。カフェやバーの値段は、ソウルのほかの地域とほとんど変わらない。営業時間は店ごとにまちまちで、しかもよく変わる。各店の地図アプリの情報やSNSを確認し、イベントについては芸術工場自身の告知を見ておこう。一帯の一部では再開発が進んでいる。動画で見た街区が、いまは工事の仮囲いの向こうにあるかもしれない。スクリーンショットは住所ではなく、雰囲気の手がかりと考えたい。訪れる人がいちばん陥りやすい失敗は、一枚を撮るために、開いた工房の戸口に足を踏み入れてしまうことだ。その戸口は、機械が動き、鋼材が行き交う誰かの作業場の入口にあたる。それに、たいていは路地から撮った写真のほうがいい一枚になる。
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