英語原文からの翻訳です。訂正歓迎します。
桐生ののこぎり屋根――工場が北を向く、絹織物の町
平日に桐生駅から北へ歩くと、屋根の連なりが少し奇妙なふるまいを見せはじめます。家々のあいだに、背を下にして置いた手鋸の歯のような三角形が並んで立ち上がり、その一枚一枚は片側がガラス張りで、もう片側は窓のない壁。そのひとつの奥から、かすかに、規則正しいカタン、カタンという音が聞こえてきます。車の音でも、工事の音でもありません。織機です。いまも動いているのです。
光に合わせて屋根をつくった町
桐生は群馬県の東端、関東平野が丘陵に突き当たって尽きるところにあります。渡良瀬川と、それより小ぶりな桐生川。ふたつの川が、染め職人たちに必要な水をもたらしました。町は何世紀にもわたって絹を織りつづけ、古い言い回しは京都の織物の町とこの町を対にして語ります。「西の西陣、東の桐生」と。
「西の西陣、東の桐生」と呼ばれた、絹織物の町です。
その生業が空の輪郭に残したものが、のこぎり屋根です。歯の垂直な面はガラス張りで北を向いているため、織り場には直射日光を入れずに昼の光だけが届き、染めた糸は朝も午後のなかばも同じ色に見えます。地元の数えでは、こうした建物がおよそ200棟残っているといいます。博物館のような一画に集められているわけではありません。庭の塀の向こうに、駐車場の隣に、配達のバンも入れないほど細い路地の突き当たりに、立っています。
本町通り、アーケードから古い街区へ
町の背骨は本町通り。まっすぐな通りで、北へ歩くにつれて丁目の数字が小さくなっていきます。JRの駅からは、末広町の屋根のかかった商店街をたどると、通りの途中に出ます。そこで左に折れ、そのまま進んでください。建物は低く、古くなり、看板はプラスチックから手描きの木のものへと変わっていきます。
最後の街区、本町一丁目・二丁目と隣の天神町は、桐生新町と呼ばれる国選定の保存地区です。ここの敷地は間口が狭く、奥行きがとても深い。通りに面して店、その裏に蔵、いちばん奥に織物工場という並びです。のこぎり屋根を見落としやすいのはそのためです。通りの正面に沿って眺めるのではなく、脇の通り抜けをのぞき込んでみてください。
二丁目の有鄰館(ゆうりんかん)は、味噌、醤油、酒を醸造していた商家が残した蔵の一群です。ひとつは煉瓦造り、ほかは土蔵造りや木造で、現在は市が展示や手仕事の市、コンサートに活用しています。催しのない日には、煉瓦蔵が開け放たれたまま空っぽで、夏でもひんやりとしていることがあります。ただし、それを当てにする前に市の観光協会に確認を。
通りが行き着く神社
本町通りは桐生天満宮の鳥居の前で終わります。町はこの地点を起点に、南へ向かって町割りされました。たいていの人は拝殿で頭を下げて引き返します。けれど、その裏にある本殿まで回り込んでみてください。外壁は彫刻でぐるりと覆われ、龍や波、衣をまとった人物たちが流木のような灰色に風化しています。細部は、玉砂利の上からじっくり眺められるほど間近にあります。
月に一度の骨董市には、境内いっぱいに着物の反物、鉄の道具、そして工場ではもう使われなくなった木製の杼(ひ)や糸巻きが並びます。開催日は地元で告知されており、それに合わせて旅程を組む価値があります。隣は群馬大学の桐生キャンパス。染織の学校を前身とするところで、神社脇の静かな小道は、授業の切り替わりどきになると自転車の学生たちでいっぱいになります。
のこぎり屋根の内側へ
のこぎり屋根の建物の多くは個人の仕事場や住まいで、路地から眺めるのが正しい見方です。なかに入れるところもいくつかあります。本町通りの東、東(ひがし)地区にある織物参考館「紫(ゆかり)」は、古い工場の一部を資料館として残している現役の織物工場です。木製の織機や、かつてジャカード機に織る柄を伝えていた穴あきの紋紙が展示され、染め場では藍染めを体験できます。入館料は手ごろで、染め体験は別料金と考えておいてください。休館日は工場自身の案内で確認を。
ほかの場所では、屋根の下に新しい入居者がいます。東久方町の煉瓦造りの工場にはパン屋が入り、美容室やアトリエになっているものもあります。シルエットよりも、壁のほうに違いが出ます。木造もあれば煉瓦もあり、大谷石のものもあります。隣の栃木で切り出される、やわらかな灰緑色の火山性の石です。駅の近くでは、桐生織物記念館が1階で地元で織られた布を販売していて、織機が生み出すものを手に取るにはいちばん手軽な場所です。
幅広の麺と、カツの丼
桐生の昼ごはんは、ひもかわ。うどんの生地を平たくのばし、幅広に切ったものです。店によってはその帯が手のひらほどの幅になり、布のようにたたまれてざるにのってきます。箸で持ち上げると、ぶら下がるというより、しなだれる。はねを飛ばさずにつけ汁へ収めるには慣れが要ります。昼だけ営業し、生地がなくなりしだい店じまいする麺の店も少なくありません。
もうひとつの地元の習わしがソースカツ丼。小ぶりのヒレカツをさらりとした甘めのソースにくぐらせ、白いごはんにのせたもので、卵もキャベツもありません。食後は、末広町や本町通り沿いの喫茶店へ。たいていは飾り気のない店で、窓には色あせた食品サンプル、入口脇にはスポーツ新聞のラック。誰にも急かされません。
行き方と、間違えてはいけない駅
JR桐生駅は両毛線の駅で、この路線は、いずれも新幹線の停車駅である高崎と小山のあいだを走っています。北口から天満宮までは歩いておよそ30分、その大半は本町通りです。その日にレンタサイクルが使えるかどうかは、駅の観光案内窓口で教えてもらえます。もうひとつの小さな終着駅が、上毛電気鉄道の西桐生。数分離れたところに木造の駅舎で立ち、前橋へとつながっています。ICカードが使えるかどうかは、当てにする前に窓口で尋ねてください。
間違えやすいのが新桐生です。浅草発の東武の特急「りょうもう」が停まり、名前からは中心駅のように思えます。ところが駅は渡良瀬川の対岸にあり、旧市街まではバスかタクシーに乗る距離です。列車は快適で乗り換えもありませんが、移動の時間を見込み、出発前に市にバスの時刻表を確認しておきましょう。運賃と座席指定については各社が案内しています。
織機の音を聞きたいなら平日に。ただし小さな資料館は、それぞれが決めた平日に休むことがよくあります。盆地は真夏の暑さで知られ、八木節まつりの週末には本町通りが踊り手と屋台で埋まります。路地歩きに向いているのは春と晩秋。低い陽が屋根のガラスを浮かび上がらせる季節です。
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